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感想:池澤夏樹『春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと』


池澤夏樹『春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと』


震災をめぐって考えた記事はたくさん読んだが、
池澤ワールドは、また別の視点を与えてくれた。

洪水や津波などの災害が発生している中で、
少したとえは不謹慎になるのかもしれないのだが、
水が少しあふれて、地を薄く覆うようなイメージで
滋養にあふれるメッセージが細胞にしみこんでいくような
静かな感動を覚えた。

マスコミに出回る被災地の写真では、
建物の壊滅的な被害状況、そして何もなくなってしまった土地は
大々的に映し出される。
そして数字として、亡くなった人の数が報じられる。

だが、「亡くなった人たち」のリアルな映像はない。
だが映像は”ある”のだ。
亡くなった人たちは”いる”。


池澤さんが指摘するように
私たちは、自然に意思はないことは知っているが、
そこに意思を求めたくなる。

(津波が)「あと20秒遅かったら」という言葉は、
誰に対して発せられる言葉なのか。

とはいいながら
人間は、自然に話しかけながら(春をうらんだりしながら)
生きていく。

池澤さんが引いた
「深草の野べの桜し心あらば今年ばかりは墨染めに咲け」
(古今集)があまりにも、心にしっくりと来る。



自然に意思はないが、意思があるかのようにとらえる、
その事例として、宮澤賢治の童話『水仙月の四月』が
引用されていた。

思わず、原典にあたったが、自然の残酷な事象をも
このような「童話」という形で、とらえなおす姿勢。
水仙月の四日 あらすじ

自然との対話というと、
スピリチュアル系や宗教的なものとして、
構える向きもあるかもしれないが、
小さい頃、イベントの前のてるてる坊主は、
普通にやっていたような気がする。



そして対話は、生きている人の間だけのものではない。

いつぞやに
ワールドカフェ(対話イベント)で、外国人がある人の欠席を伝えるのに
「今日○さんは、亡くなったお父さんとの対話のために、
この会は欠席されています」
と伝えていたことを思い出す。
by neco5959 | 2011-10-29 11:03 | 地震
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